杉並の児童館をなくすな! 道徳・戦争教育推進の安倍「教育再生」

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杉並児童館全廃攻撃は、安倍の進める戦争教育を「社会総がかり」で貫徹するための攻撃です。戦争法案阻止の闘いとともに児童館全廃を絶対に打ち破りましょう。

社会総がかりで放課後も道徳教育強化

安倍政権は、第1次安倍内閣時に設置された「教育再生会議」(首相の私的諮問機関。06年〜08年)の「教育の再生はわが国の最重要課題……社会総がかりで教育再生を」なる提言を継承し、戦後教育の全面解体に乗り出しています。特に教育労働者によって阻止されてきた「学校教育における徳育」を「直ちに実施すべき事項」とし、「家庭・地域・学校の連携の強化(放課後子どもプランの全国での完全実施、学校支援地域本部の全国展開、親の学び)」を挙げ、子どもたちに放課後を含めた「全ての教育活動を通じた道徳教育を」行うものです。
14年5月、産業競争力会議で田村厚労相と下村文科相が「放課後子ども総合プラン」(以下「総合プラン」)を発表しました。その趣旨・目的は「共働き家庭等の『小1の壁』を突破するとともに、次世代を担う人材を育成するため、全ての就学児童が放課後等を安全・安心に過ごし、多様な体験・活動を行うことができるよう、一体型を中心とした放課後児童クラブ(学童クラブ、厚労省所管)及び放課後子ども教室(文科省所管)の計画的な整備等を進める」というものです。
そこでは、市町村の教育委員会と福祉部局の責任のもと、新設する学童クラブの約80%を小学校内で実施し、民間サービスの活用を促進するとした上で、「総合教育会議を活用し、首長と教育委員会が総合的な放課後対策の在り方を協議」としています。
児童館をつぶして学校施設内に作られる「一体型の学童クラブ及び放課後子ども教室」は、今までの学童クラブとはまったく性質が異なります。学童クラブも児童館も設置根拠は児童福祉法に基づいており、学童クラブは、保護者が就労などにより昼間、留守になる家庭の子どもたちの下校後の生活の場であり、児童館は地域の中で子どもを育てる自主的な活動の場です。しかし「放課後子ども教室」とは、放課後まで子どもたちを学校にとどめて、文科省・教育委員会の教育方針でしばり付けるものです。「総合プラン」は学童クラブを解体して放課後子ども教室に一体化させていくものなのです。
杉並の児童館全廃攻撃を先行しているのが、学校選択制導入や小中一貫校設置を先陣を切って推進する品川区の「すまいるスクール」です。

学童クラブを民間に委託し非正規化狙う

07年に厚労省、文科省による「放課後子どもプラン推進事業」が始まり、品川区は07年から実施。学童保育は17年度限りでの全廃が狙われ、すでに全小学校に登録制の「すまいるスクール」という全児童を登録対象にした放課後子ども教室が設けられています。ある小学校では全校児童361人中243人が登録。昼間保護者が家にいて、習い事に通う子ども以外は、放課後の居場所はここしかありません。
平日の参加児童は100人前後で、正規職員1人と時給900円の非常勤職員12人が指導にあたります。「事故が起こらないように見ているのが精いっぱい。まるでプールの監視員。家庭の代わりとなる学童保育の機能は果たせない」というのが指導員の声です。「総合プラン」では退職教員の雇用対策として打ち出していますが、教育労働者と学童指導員の非正規職化と公務員労組つぶしが狙いです。
また「総合プラン」では、「高付加価値型のサービスを提供する民間企業の参入」をうたい、学校施設の活用で学童保育の財政を削減した上に、巨額の助成金で運営を民間業者に委託することを狙っています。学童保育を資本のもうけの餌食にしようというのです。放課後子ども推進事業のモデルとなっている足立区では全施設で民間委託を実施しています。
子どもたちの生活も保育も破壊するこんな施策は必ず破綻します。子ども、保護者、学童指導員の疑問や怒りが沸き起こることは不可避です。
児童館廃止=学童クラブの放課後子ども教室への一体化は、「待機児童解消」を口実にして今年4月から実施された「子ども・子育て支援制度」と同様、女性労働者を低賃金・非正規労働に駆り出すものです。日本再興戦略では、「女性の更なる活躍推進」のために「『待機児童解消加速プラン』に加えて『放課後子ども総合プラン』を策定」としています。児童福祉を切り捨て、子どもの貧困、女性の貧困をつくり出すことなど、絶対に許せません。

教組・公務員労組を軸に地域の闘いを

さらに児童館全廃は、エリート教育推進と学校統廃合を狙う小中一貫校設置と連動した攻撃です。「杉並区小中一貫教育基本方針」では、「学びの系統性・連続性」を強調しますが「施設一体型の整備も検討」と和泉学園に続く2校目の一体型建設を進めています。
杉並児童館廃止に反対する地域住民と労働者の怒りの決起が始まりました。教育、学校、地域を破壊する安倍「教育改革」攻撃に対する闘いです。教組、公務員労組が軸に据わった時、地域丸ごとの闘いで阻止することは可能です。公務員労働運動を復権させ、児童館廃止を阻止しましょう。
(藤村路子)

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▼児童館 児童(0歳〜18歳未満の子ども)に遊びを提供する屋内型の施設。児童福祉法に基づく。集会室、図書室、創作室、遊戯室などが設けられ、専門の指導員が子どもの遊びを支援する。
▼学童クラブ 保護者が労働等により昼間家庭にいない6年生以下の児童に対し、授業終了後に児童館等を利用して遊び及び生活の場を与える事業。「学童保育」「放課後児童クラブ」とも呼ばれる。児童福祉法の規定に基づく。厚生労働省が所管。戦後における地域の自主的な保育活動から始まる。
▼放課後子ども教室 放課後や週末、全児童を対象に校庭や教室を開放し、地域住民の協力などでスポーツや文化活動ができるようにする取り組み。文科省が04年度から実施。

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