福祉と教育をねらいうち 現場に区職員いなくなる
──山田区政がねらう民営化や民間委託化とは、どんなものでしょうか。 おもなものに、学校給食の民間委託化、保育園の公設民営化、「障害者」施設の公設民営化、高齢者活動支援センターのNPOへの委託化があります。学校給食調理業務の民託化については、スマートすぎなみ計画がだされる前に、山田区長が区長になったと同時くらいに出してます。
スマートすぎなみ計画で区職員を減らすというが、福祉や教育で、どのくらい減るのか、区議会でけしば議員に質問してもらいました。減らされる正規職員の45.7%が福祉・保健・教育の部門にたずさわっている。減らされる嘱託員(非常勤)の48.7%。パート職員の91.9%も同様です。
実際に計算してみると、正規職員だけで1693人。嘱託員とパートが721人。正規職員が退職したあと非常勤として再雇用された人が104人。全部あわせると2500人近くなります。 杉並区の責任放棄 学校に関しても、さまざまな業務が委託化です。区の職員で学校に関わっているのは、用務員、警備、事務、学童擁護、給食調理員と栄養士。学童擁護、警備は、ずいぶん前から退職不補充で削減されています。警備は機械化され、用務も削減。学童擁護は、だいぶ前から削減され、昨年度で28人しかいません。いわゆる「みどりのおばさん」ですね。これは今、シルバー人材センターに委託しています。学童擁護、警備は、最終的に廃止すると言っています。
学校事務も、暫時廃止することが決まっているんです。学校事務の職員は、都の職員と区の職員と区の非常勤の職員3人がいます。このうち、区の正規の事務職員を引き上げ、徐々に減らしています。そして学校給食の民間委託で調理員もいなくなっていく。
学校から、栄養士以外、区の職員が全部消えちゃうんです。栄養士も、正規職員は都の職員です。区の職員は非常勤だけ。だいたい半分の学校で非常勤がやり、半分を正規がやっているということです。
南伊豆健康学園があります。昔で言う「虚弱児施設」ですね。学校給食と同じ時期に廃止が決まりました。それから幼稚園も暫時廃止。6園くらい公立幼稚園がありますが、これもなくす。もうなくなった園もあります。林間学校施設の菅平学園も富士学園も、完全に民営化になります。
要するに、福祉や教育は全部なくなっていくのです。残るのは行政職ですね。直接に福祉とか教育にたずさわる区の職員がいなくなるのです。 保育の「規制緩和」とは営利追求の場にするもの ──保育園は、どうなるのでしょうか。
保育園は公設民営化するという。公設民営化とは、どういうことか。2000年ごろから政府の行革推進本部規制改革委員会などが「規制緩和」と言いつつ、「高まる保育需要に対しては保育園を増やすしかない」、だけど「公立の保育園をこれ以上増やすことはできない」、だから「公で作って民間にやらせる」という方向を出してきたわけです。
これは介護保険でも同じなんですが、本来福祉とは営利にはなじみませんから、規制緩和しないと民間は参入しないのです。保育園の場合、児童に対する保母の定数が決まっています。医療関係者も置かなければならない。児童福祉施設最低基準というのがあって、幼児一人あたり何平方b以上とか、園庭がなければならないとか、いろいろ規制があります。それを緩和しないと民間は参入しない。
小泉政権になって、「待機児童ゼロ作戦」などとよく言われるようになりました。どうするかといえば、保育の規制緩和です。
その一つが「定員の弾力化」です。建物の面積と職員の数で定員は決まる。それを緩和する。要するに狭くても詰め込んじゃえというわけです。あるいは「分園の促進」。一つ保育園を作るには、満たさなければならない規定がある。それを、本部保育園を作ったら、あと分園をいっぱい作っていって、その全体で規定を満たしていればいいと、そんなことも始まっています。分園については、98年に児童福祉法の改正がありました。
それと「短時間保育士の導入」です。何年か前から厚生省は短時間保育士という不安定雇用を認めています。しかし、それは2割以下で、原則は常勤でなければならないという規制がかかっています。保母が10人いたら、その8人以上は常勤でなければならない。こういうものも、さらに規制緩和していこうとしています。 直接補助方式とは
それと「直接補助方式」を言い出しています。これは介護保険と同じように、行政の責任を放棄するものです。措置制度から利用者と民間事業者との契約制に変えるものです。昔は老人施設には高齢者がお金をはらうわけじゃなかった。お金は行政から来る。保育園も同じです。自己負担額はありますが、システムとしては、行政負担分が保育所に入る。つまり、保護者は保育園にとってお金をはらってくれる「お客さん」ではない。それを、親に補助を出して直接はらわせる契約制に変えるのです。
92年頃、厚生省が出してきた「保育サービス法」がありました。あのとき反対が多かったので、通りませんでした。契約制にもっていきたかった国と、反対する父母との痛み分けみたいな形になった。98年度、児童福祉法改正となるんですが、実質的には措置制度は残っているんです。国庫負担額が決められていて。直接補助方式でもありません。ところが児童福祉法から「措置する」という言葉はなくなりました。素地は作られていたのです。
たんに需要が多いだけでなく、親の労働形態が多様化し特別保育、つまり延長保育、夜間保育、一時保育の需要があるのだとも言う。これに行政は十分に対応できないと。モデル事業として、行政も延長保育、夜間保育、一時保育を始めています。だから「公立ではできない」というのは、ためにする議論なんです。保育の需要が多い、特別保育の需要がある、だから公立保育所では対応しきれないという図式にはうそがあります。
今の「規制緩和」というのは、国や行政が保育をやめることが前提になっています。ねらいは民間の参入です。行政の責任を投げ出し、保育を大手民間業者の営利追求の市場とするためのものです。(つづく)

福祉はすべて切り捨ての対象
行政の責任放棄し負担増迫る
保育園の公設民営化では質は低下し負担増になる ―杉並区の保育の規制緩和や民営化の動きは、どうなっているのでしょうか。 山田区長は、スマートすぎなみ計画を出してから、2003年度実施に向けて、去年の7月に「杉並区保育サービス提供ありかた検討会」というものを設置し、今年の4月、その「中間報告」発表しました。
そこで何を言っているかというと、「国の待機児童ゼロ作戦」に基づき、保育サービス需要の量的増大に対応していくとしている。一時保育、延長保育、休日保育、緊急時保育など特別保育事業という、保育サービス需要の質的変化にも対応していくとしています。
厚生省が保育サービス法を持ち出した時に言われたことですが、昨今は「保育に欠けるこども」から「保育を必要とするこども」に保育の質的需要が変化していると言われています。
「保育に欠ける」とは何か。保育所入所というのは、児童福祉法に定める「保育に欠ける状況」のこどもを保育するということなんです。要するに養育者の就労ですね。就労のために、その間こどもの面倒をみれないという。あるいは、養育者が障害や病気で面倒みられない場合。また、養育者がその子以外の者を看護している場合、たとえば高齢者介護でこどもの面倒みられないような。この三つが保育所入所の要件となる「保育に欠ける状況」です。
ところが、今言われていることは、いまや女性は自立している、いま言った「保育に欠ける」状況がなくとも、女性がもっと生き生きと生きていくために勉強したりとか、そういった時間に預かる必要があるんだと。あるいは一時的に保育を必要とする親だっているじゃないかと。そういうふうに保育サービス需要の質は多様に変化しているのだと言う。
もっとも、一時保育の需要には、現代の複雑な環境のなかで、育児に自信をなくした親が緊急避難的にこどもを預けたいと言う深刻な問題もありますが。
しかし、この議論は、保育所の規制緩和・民営化するための論理です。よく考えてみれば、こうした需要の解決と規制緩和・民営化とは、まっく結びつくものではありません。為政者が言いたいのは、ちょうど介護保険になるときに、高齢者福祉が「困窮した高齢者から、高齢者に普遍的なものになった」というふうに概念を変えていったことに似ています。福祉とは困窮者の問題じゃないんだと、だから裏返せば「金取っていいんだ」というふうになるんです。そのための議論です。
話をもとに戻すと、区は、こうした状況をふまえてどうするというのか。保育需要の量的拡大、特別保育などの質的変化にどう対応していくのか。というと「それには制約がある」という。
第一の制約とは、財政的制約だと。現行保育サービスの上限が上限なんだと。これ以上増やしてはならない、この枠内でやるんだと。増やしていくのに今のお金でやれるわけがない。
第二に、「職員定数上の制約」。「現行保育士定数を段階的に削減していくことに配慮しなければならない」と言っています。すなわち区の保育園の保母は減らすんだと、これが前提であるとしています。
第三に、「公設民営化」=民間委託や、「民設民営」=完全民営化、すなわち区の直営の保育所はこれ以上増やさず、減らしていくことが前提であるとしています。
それから、もう一つ、保育コストにあわせて保育料の見直しもはかる必要があるとしています。要するに保育料を値上げすると言っている。 認証保育制度を導入して保育への区の責任を放棄 いまのところ政府も区も「保育サービスの質を落とさず公設民営化」と言っています。「児童福祉最低基準を守ることが原則だ」とも言っています。しかし、保育園民営化の流れの中で、認証保育所制度に明らかなように、間違いなく質はかなり低下するでしょう。
―認証保育制度とは、どういうものですか。
都が先がけて作ったのが認証保育制度です。認証保育所とは、延長や夜間、一時などの特別保育に対する需要があるから、保育所の規制緩和をしていくという方向にあるものです。現在の児童福祉施設の認可最低基準を満たさないところに対して、認証保育所というものを作ったのです。
たとえば現在認可保育所では、パートなどの短時間保育士は、保育士全体の2割までという規制がありますが、認証保育所では、4割までパートなどの短時間保育士でかまわないとしています。
認証保育所にはA型とB型があるのですが、B型の場合は、園庭の設置義務がありません。
たとえば駅前保育所など、マンションの一室でやっていますよね。そういうのを認めていくということです。これに対する需要があるのだと。たしかに駅前にあれば、こどもを通わせる父母にとっては便利ですが、こどもにとってはどうか。
児童福祉法でも、認可施設でも、園庭がなくとも近くに公園など園庭に代わるものがあればいい、となっています。そうはいっても実際は園庭を持たない保育園は認可されませんでした。昨今は園庭に代わる場所が近辺にあれば認可するようにという厚労省通達がでていますが。駅前のマンションなどの場合、近くに公園なんかないだろうし、交通量の問題もあって、こどもたちがぞろぞろ歩いて行くわけにもいきませんから。
そして認証保育所は「開所時間」を13時間とうたっています。「保育時間」と「開所時間」とは違うんです。いま保育時間は原則1日8時間でなければならない。夜10時に親がむかえにくるのなら午後2時から夜10時までの8時間になります。つまり延長とか夜間保育を前提としてやっているわけですね。保育時間は8時間でも、保育所は13時間開いているわけです。13時間以上開所していることが条件で、でないと認証がとれないのです。 資本の利益を優先
延長保育や夜間保育は、現実の需要は確かにありますが、だからと言って、即認めていいものか疑問はあります。一定の延長保育はやむをえないと思いますが、特に夜間保育はどうでしょうか。延長や夜間保育は、現象としては労働者の需要ですが、実は資本・使用者の需要なのです。
資本は、少子高齢化のなかで、女性労働力をどう使いこなすかと考えています。女性労働力の大半は不安定雇用です。不安定雇用で低賃金の女性労働者をいかに長時間、しかも夜間も使いこなそうという資本の需要から延長保育や夜間保育の需要が生まれていることを見逃してはなりません。
認証保育所は、認可保育所とは違って、措置制度ではなく、事業所との直接契約です。
認可保育所の場合は自己負担額は応能負担で、所得に応じた基準を作っています。しかし、認証保育所は保育科は業者の設定です。いまの認可保育所の上限は超えるなとは言っているだけで、応能負担にしているわけではないのです。
それと事故の問題があります。80年代にべビーホテル問題が社会問題化しましたが、それがいまもあるということです。南池袋の「ちびっこ保育園」でこどもが窒息死する事件がありました。「ちびっこ保育園」経営は、それ以前から事故を起こしていました。9都府県の施設で、75年の開業からこれまでに池袋での事故を含めて計21人の乳幼児が死亡しています。
南池袋の事件では当然にも、親が訴訟を起こしました。そのときに園は、今後の保育園の改善方針というのを親に対して出しました。その改善方針をみると、今までがいかにめちゃくちゃだったかというのがわかります。
そういう状態に一定の規制をかけるという意味があるのだというのが認証保育所、これが行政側の論理です。一定の規制をかけながら、民間企業等の儲け主義の保育を認めて、公立保育所の拡充を怠っていくという流れです。山田区長が言っていることは、こういう大きな流れの中にあるのです。
保育などの福祉事業は経費がかかるのに儲けは少なく本来民間営利事業にはなじみません。これを民間営利企業にやらせるとなると、徹底的な経費削減を行い、その利ざやで儲けをあげるしかありません。保育など福祉事業の経費のほとんどは人件費ですから、保育士の数を徹底的に減らし、身分もパートなどにして低賃金化する以外利潤をあげる手段はありません。
今回の事故でも、元保育者が「職員数を抑えた過酷な労働条件のもとで、身体的、精神的に限界になり、こどもたちに手がまわらなかった」と証言しています。
国は、民間営利企業にも保育所をやらせるとしています。そのために、国は保育の規制緩和を推し進めているのです。それが「待機児童ゼロ作戦」です 戦後の福祉の成果すべてなくしてしまうねらいが 戦後の地方自治体は福祉部門を重視してきました。高度経済成長の時期に、日本の福祉は整ってきました。都市化して、核家族化していったからです。昔は、こどもの面倒は嫁がみるもの、あるいは年寄りの面倒は嫁がみるもので、「障害児」は親が面倒みるもの、とすべて女性がになってきました。家族がいっぱいいて、姑といっしょにやったり、こどもが多いからきょうだいが面倒みたり、そういう構造が崩れました。それでどんどん需要が高まってきた。
こういう戦後の自治体のあり方からして、自治体における福祉費は高くなっています。全体の三割くらいです。自治体における福祉職員の数も多い。たとえば保母ですが、これは福祉直接職の中核です。かつて高齢者施設の職員も保母だったんです。私も保母です。保母の資格さえあれば、障害者施設、保育園、養護院、教護院、老人施設、どこでも働けた。当然保母の数は多いんです。
ところが、ここにどう手をかけ、福祉を切り捨てるかが、向こうのねらいなんです。
福祉というのは、高齢者福祉、児童福祉、「障害者」福祉の三つ。困窮者の問題、生活保護法の問題もありますが、そこでは支給を抑制することで実質的に削っています。つまり福祉は全部変えられようとしているのです。福祉という考え方をなくしてしまおうとしている。そこに杉並区の山田区政も連動して動いているということなのです。

「障害者」福祉も切り捨て 福祉労働者とともに反撃へ
措置から契約へ 山田区政は「障害者」施設でも、公設民営化をすすめようとしています。来年度から国の「障害者」福祉制度が、高齢者福祉と同じく措置制度から契約制度に変えられることが背景にあります。
「措置」は憲法25条にもとづき、行政が国民に生存権を保障する具体的行為です。日本の福祉制度は、2000年に社会福祉事業法が現在の社会福祉法に「改正」されるまでは、福祉事業は国・地方行政が直接行うことが原則でした。社会福祉事業法は、行政が福祉の責任を他者に転嫁してはならないとし、民間が行う福祉事業も本来は行政が行うべき措置を委託したものに過ぎず、その事業責任はあくまで行政にあるとしていました。
措置制度をなくし、契約制にするということは、福祉事業から行政が撤退し、その責任を放棄することであり、福祉事業を一般の商業サービスと同じにすることです。
こうした措置から契約への流れは、80年代末「福祉の財源をどうするのか」「措置制度をなくすべきだ」という厚生省の論議からはじまっています。ここから介護保険制度や児童福祉法・保育サービス法の動きにつながり、そして社会福祉事業法の改正で「障害者」福祉での措置制度も解体されようとしているのです。 障害者福祉を解体する「支援費制度」 「障害者」の人権の保障の前提は、福祉予算が十分かどうかです。私は、「障害者」が街の中であたり前に生きること、「共に生きる」ことが保障されまたその考え方と姿勢があるのかどうかが一番重要だと考えています。これまで「障害者」はその保障を身をもってかちとってきた歴史があります。
来年4月からはじまる「支援費制度」は「福祉サービスを障害者自らが選択できる」というのがうたい文句となっていますが、その本質は介護保険と同じく措置制度を廃止し、契約制度を導入するということにあります。行政が公的責任を放棄し、「障害者」がかちとってきた福祉を解体することにほかなりません。 福祉職員がいなくなる
行政の中にしめる福祉職員の人数は多いのです。杉並区に働く約4500人の職員の中で、「障害者」施設と保育園に働く保育士は736人です。非常勤は100人以上。パートタイマーは413人。ここだけでも1200人以上が働いています。
正規の保育士の数と現業職の数をあわせると1800人くらいになります。スマートすぎなみ計画によってこの1800人がいなくなるのです。
山田区長は現業職と福祉職にねらいをさだめています。その理由の一つは、現業や福祉職が自治体労働組合運動の主力をになってきたからです。それを切り捨て、民営化、民間委託化することで、労働運動をつぶそうということです。これによって杉並区の職員は、管理職と管理職候補生だけになってしまいます。実際に区民と接する福祉や教育・民生の現場から区の職員がいなくなるのです。区民にとってますます声や心のとどかない杉並区になってしまいます。
これが山田区政の正体です。区で働く労働者と区民が、ともに手をつないで、福祉切り捨てとたたかうことが必要です。
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