もどる 2002年3月1日up

医療制度改悪に反対

高齢者に「死ね」と言うに等しい

どうなるか試算してみると

今、国会で問題になっている「医療制度改革」には、与党内にまで根強い反対の声があり、サラリーマンの医療費3割負担とその実施時期を、明記するかどうかをめぐって攻防が続いています。小泉首相は、何としても「3割負担」を強行突破するかまえです。
 2月22日には、政府・自民党は、「抜本改革」と称して、中小企業サラリーマンを対象とする政府管掌健康保険(約3千7百万人加入)を5年以内に民営化することなどを発表しました。
 患者の自己負担引き上げと医療保険制度を「抜本改革」することは一体であるかのような、つまり負担が増えるかわり制度はよくします、という議論がされていますが、まやかしです。「抜本改革」とは、制度を改悪するものです。金がない者は医者にはかかれない制度にするものです。高齢者や低所得者に「死ね」と言うに等しいものなのです。
 「医療制度改革」で、どういうことが起きるのか、本当のところは隠され、わかりにくくされています。そこで、実際にどうなるのか、いくつかの例でシミュレーションしてみました。
ケースA
夫が中小企業で働く結婚10年目の30代なかばの夫婦とこども一人の世帯
 妻は仕事勤めはしていない。夫の給与は月30万円とボーナス2回各30万円。政府管掌健康保険

保険料率が月収8.5%から年収8.2%に。

率は下がったように見えるが、ボーナスにもかけられるようになるため保険料負担は年額では1万9200円の負担増。

ケースB

前記の世帯で、夫が虫垂炎(盲腸)で7日間入院したらどうなるか。 

現在の2割負担では5万5450円だが3割負担に変わると7万9220円になる。
高額療養費制度の適用を受けても、これまでの限度額6万3600円が7万2300円に引き上げられるため、いったん7万9220円支払い、3カ月後に6920円の差し戻し額を受け取る。

ケースC

同じ世帯で夫が胃がんで入院したらどうなるか

現在の平均的ケースでは手術前検査入院1週間手術後3週間で退院して入院期間は1カ月になる。
退院後も半年から1年定期検査があり、最低5〜6年間は通院し投薬診療を受ることになる。
入院医療費は現行2割では32万4640円が3割患者負担になると50万7040円になる。
高額療養費限度額は現行6万3600円だが7万2300に引き上げられたため、約1万円の負担増になる。
退院後の検査と薬代は現行で年5万4000円月では4500円だが年8万1000円に月では6750円になる
平均的な労働者世帯を例にしてみたが、もともとギリギリの生活をしていたこの家族は、どうなってしまうだろうか。
高額療養費制度といっても、いったん50万円以上の医療費を支払わなければ、返還にはなりません。貯金はすべて取りくずし、借金をするか妻が働きに出るか。夫は当分無収入だし、元の職場に同じ条件で復帰できたとしても大変な負担です。
2割を3割にするとは実は1・5倍にするということです。労働者は病気になるな、病気になったら、すなわち家族崩壊ということです。
では次に高齢者医療制度の改悪では、どんなことが起きるのか見てみましょう。
ケースD
 一人暮らしの76歳の女性で、収入は年金が月に3万9000円、息子からの援助が月1万円とし月4万9000円で生活
 高血圧と骨粗しょう症で月2回、診療所に通っている。介護保険料の全額徴収でギリギリだった生活も苦しく、食費をけずるようになった

現行は診療所の定額制で800円×2回。保険薬局での負担はないので1600円。

これが制度改悪後には1割定率負担1962円保険薬局負担2450円合計4412円となる。2・7倍化したことに。

 月に2812円の負担増は、この女性に、医者にかかるのをやめるか、食事をするのをやめるかという選択しかもたらしません。ようするに高齢者に「死ね」と言うに等しいことです。ほかにもさまざまなケースがあります。これからも紹介していきたいと思います。
 はっきりしていることは小泉「医療制度改革」など絶対に許してはならないということです。
ケースE
 夫75歳、妻70歳の二人暮らし。収入は二人の年金だけで7万4千円。家賃は3万7千円、光熱費と新聞代で1万9千円
残る貯金は2百万円
 妻が神経痛で町医者に週3回通い、週1回は痛みをやわらげる神経ブロック注射。週2回は牽引療法と高周波療法
 月の医療費の点数は、神経ブロック注射が7200点、牽引と高周波で2400点、計9600点になるが、現在は負担上限制があるため3千円ですんでいる
 それでも残るお金は、わずか1万5千円。それではやっていけないから毎月貯金を2万円おろし何とか暮らしてきた
 介護保険料の全額徴収が始まり貯金の取り崩しは月3万円近くなった
 ここで夫が、風邪をこじらせ肺炎で倒れ、高齢のため回復に長引き、4週間入院したとすると、どうなるのか
 

医療制度改悪によって 妻の通院医療費は定率1割負担になって9475点=9475円

 「改正」による外来自己負担の限度額は、年収130万円以下は8000円だから8000円の自己負担となる

 つまり現行制度よりも5000円増えることに
 夫の4週間分の入院は定率1割負担になると5万4830円になる

年収130万円以下だから実際の自己負担額は1万5000円となる

 ただでさえ妻の医療費5千円の負担増によって月々の貯金取り崩しが増え、56カ月、5年たたないうちに底をつくことになります。その上に夫が病気になったりしたら大変です。また介護が必要な状態にならないという保証もありません。
 結局、通院を減らしたり、食費をけずるしかなくなります。ますます体は弱り、どこにも展望は見えなくなるのです。
 次に平均的な労働者家族を想定してみましょう。たとえば、その人が慢性疾患をかかえていたとしたらどうなるか。
ケースF
 糖尿病を患う44歳の労働者。妻40歳のパート収入6万円と自分の給与30万円とあわせて月36万円の収入。預金100万円
19歳の大学生、14歳の中学生、12歳の小学生の3人のこどもがいる
 住んでいる家の家賃は11万4千円。光熱費・教育費その他で月々8万円大学生の子はアルバイトして親の負担を少しでも減らそうとしているが、それでもこれだけかかる
 夫は糖尿病で11年間のインシュリン療法歴あり血糖調節のため1日5回のインシュリン自己注射と月2回病院に通院
 現在の2割負担による月々の医療費は
月2回通院窓口支払いは1回が5600円で
月に1万1200円
このほかに薬代として
毎月6800円かかる
合計して1万8000円
 このほかに食費などをあわせると毎月の生活はぎりぎりで貯金する余裕などまったくない
 制度改悪後どうなるか

 

3割負担で医療費支払いは1・5倍になり月2万7000円に

 糖尿病等の慢性疾患が定額払い制へ切り替えになると、今でも高いインシュリン療法の場合、保険でカバーされる範囲は低めに設定され、定額を超える超過分が請求され1万円程度の自費払い額が2万7000円に加えて要求されることに

 結局、現在よりも合計2万円近い負担増になる

 インシュリン注射の回数を減らせば、視力の後退や網膜症がでて働けなくおそれがあります。薬の量や受診回数の抑制はただちに病状の悪化を意味します。当面預金を取り崩していくしかないが、この不況下で給料は上がるどころか下がることも覚悟しなければならない。この一家は一体どうすればいいのか。
 このように、ぎりぎりの生活をしている高齢者や労働者から、金をむしり取るのが小泉「医療制度改革」なのです。
 
ケースG
一人暮らしの70歳女性血圧が高く心筋梗塞の気あると医者から言われ
 月2回6〜7種類の薬のほか具合が悪くなると注射や点滴を受けに内科の診療所に通っている
 診療所は1回800円で月に何回かかっても月額3200円の医療費
 実際は月7〜8回通院 神経系の病気見つかり介護保険の要支援と判定週2回介護サービス利用 介護保険利用料は
年54000円(月額では4500円)
 収入は遺族年金などで年84万円(月額7万円)
「法改正」でどうなるか

 診療所の定額制は廃止定率1割負担になる
 自己負担限度額は
「年収130万円以下」の彼女は外来で月額
8000円が限度額となる
 心筋梗塞のおそれのある慢性疾患だから、診療報酬支払いが定額払いになると必要な薬の自費負担分がかなり出てくる
 診療費は月1万8900円で、1割定率負担が1890円になる
 これまでの定額制での3200円よりも安くなっているが、しかし
定額を超える心臓の薬代約1万円が自己負担に
 これまでは定額3200円の枠内におさまっていたものが、実際の自己負担は合計すると
1万1890円になる
 結局8690円増加に
 月に7万円の年金で生きていかなければならない、この人にとって、この負担増は深刻です。
 もし、心臓が悪化して長期入院しなければならなくなったら、どうなるのか。
 6ケ月以上の入院の場合には、入院基本料の保険適用範囲をぜばめ、入院基本料の15%分、月額にして5万円の自己負担を求めるという、入院診療報酬の改訂の答申も出されています。その通りになれば、入院が6ケ月以上に長引いた場合、入院基本料も払えなくて、病院から追い出されることになります。
 そもそも老人医療費は無料だったのです。なぜなら、高齢者は収入を得るために働くことができないからです。わずかな年金だけが支えです。医療費が原則無料でなければ、病気をなおすことも生きていくこともできません。それを、相次ぐ改悪で高齢者に負担増を求め、今回、さらに改悪しようというのです。
 さらに小泉政権は「高齢者」を「75歳以上」と定義して、70〜74歳の人に2割負担を強制しようとしています。日本人の男性平均寿命は77.8歳です。小泉首相が言っていることは「75歳まで働け。働けなくなったら早く死ね。高齢者医療などやらない」ということです。
 社会を支え、今の現役世代を育ててきた高齢者は、もっともっと大切にされ、長寿をまっとうできるように、医療、介護、年金などさらに手厚くすべきです。それに完全に逆行しているのが小泉政権なのです。

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