戦争と生活破壊にNO!のたたかいが始まった
■長谷川 小泉政権が米のブッシュ政権と組んでイラク侵略戦争にますますのめりこむ中で、これが新たな「15年戦争」の始まりだということが改めて明白になってきています。憲法や教育基本法の改悪に向けた動きも強まっている。他方で労働者には大失業・リストラ・民営化の嵐(あらし)が吹き荒れ、福祉や社会保障の解体、さらに増税と、とんでもない生活破壊の攻撃が襲いかかっている。とりわけ女性労働者をとりまく現実は大変厳しいものがあると聞いています。きょうは、そのへんを具体的に、日ごろの思いを含めて聞かせていただきたい。
私自身が感じていることを言うと、この大変な時代の中で昨年11月7日、日比谷野外音楽堂に日米韓3カ国の労働者3600人が集まり、小泉とブッシュの戦争政策とたたかい、かつ資本のあらゆる弱肉強食の攻撃と徹底的にたたかうという宣言を発した。このことに非常な勇気を与えられました。何よりも戦争と民営化との対決が、アメリカでも韓国でも日本でも、まったく同じように労働者階級の課題としてすえられている。それに国際連帯の力で反撃していく。すごい時代が始まったなと。日本国内でのたたかいはまだまだ厳しいものを抱えているが、この道を行けば活路が開けてくるのではないか。そしてこの集会とデモの先頭で、女性労働者が生き生きと立ち上がっているのが実に印象的でした。
●寺田 私の職場は小学校で、教育労働者なんですが、女性が多い職場です。とくに石原都知事になって以来、やつぎ早の攻撃が続き、職場でのたたかいは女性が先頭に立つことが多いです。でも、「日の丸・君が代」論議は長いたたかいの中でやられてしまったこともあり、なかなか進みませんでした。だから、結局は行動で示すしかないと思ってきたんですが、昨年の卒・入学式で組合本部の制動をはねのけて、都高教の先生たちが300人も不起立の行動に立ち上がるなんて、はっきり言って驚きでした。教育労働者としてここは譲れないという、本当にぎりぎりの決起なんですよね。その不起立で処分されたり解雇されたりした先生たちが11・7集会に参加して、20人までもが壇上から訴えてくれました。日本の教育労働者の「日の丸・君が代」不起立の宣言が世界に発信されたわけで、すごい。韓国とアメリカの労働者が、日本の「日の丸・君が代」闘争を本当に的確に受け止めてくれたのも、すごい。日米韓の連帯のたたかいはこう始まると実感しました。
●西村 11・7集会には私も参加しましたが、労働者の本隊がついに動き出した、という感じがうれしかったですね。相模原という基地の街で反戦運動や市民運動、女性の運動をずっとやってきましたが、私たちの生活と権利を本当に守るためには労働運動がたたかいの中心にすわらないとダメだと痛感してきたんです。でも、今の連合も全労連も、いくら呼びかけても本気でたたかいに立ち上がろうとはしない。歯ぎしりする思いでしたが、この集会に参加して、ここから本物の変化が始まると思いました。
アメリカの労働者は、戦争当事国で弾圧も激しい、日本よりもっと困難な状況でたたかっているのに、ものすごく自信に満ちている。それはやはり労働者階級としての誇り、自覚だと思う。いま多くの女性が小泉政権の大失業と社会保障制度解体の攻撃の中で大変な状況におかれていますが、彼女たちの大多数は実際には労働者の家族であり、自分自身も労働者なんです。そのことをもう一度はっきりさせて、そこを原点にして女性たちの運動を作っていく必要があると思います。
派遣・請負の増加で様変わりする労働現場
■長谷川 11・7集会では、労働者の置かれている状況が世界共通だということも、よく分かりました。今、
小泉政権が戦争と民営化の政策を強引におし進める中で、一切の矛盾がますます労働者にしわ寄せされている。民営化によって公務員労働者の権利が全面的に奪われようとしていますが、それは同時に民間のすべての職場で労働者の無権利化がもっと激しく進むことを意味しているわけですね。皆さん方が直面している生の現実を、まずうかがいたいのですが。
●鷹林 私は「視覚障害者」の団体で働いています。団体ができた当初は職員も十数人でしたが、事業の拡大などによって、今はパート労働者も含めると60人近い職員がいます。その中で私は、点字出版関連の部署に所属しています。長年にわたり主に各自治体などから受託を受けて点字広報の仕事を中心にしてきましたが、年々予算が削減されつづけています。そういう状況になると、受託をする側も、安い出版社に落とす傾向が出てきます。これまで当然のようにうちに来ていた仕事の多くが、競争入札に切り替えられていきました。ある日突然、仕事がなくなったりもします。ボランティア団体などに無料で行わせるようなところも、かなり出ていますね。もう、広報だけでやっているわけにはいかないというので、これまで避けてきた手間のかかる、慣れない仕事もやらざるをえない状況になっています。だけど人はどんどん減らされていく。職員が退職しても補充されないんですよ。
以前は就業時間が終わった後に、上司も帰っちゃって、リラックスしながら多少の残業をしている中で誰かしらとちょっと話ができた。だけど最近はそういうこともしにくい。本来時間内にできる仕事が時間外に集中して、夕方以降もしゃかりきになって仕事をしないと終わらない、とても話をできる雰囲気ではなくなっています。忙しくて大変という状況になっているからこそみんなで団結して何かやりたいと思うんだけど、それがまだ思うようにいかないんですね。
■長谷川 仕事の競争が激しくなってきている、職場の状況が悪化しているということですね。白坂さんはコンピュータ関連ですが、その辺はどうですか。
●白坂 私のやっているのはソフトの日本語版を作る仕事、つまり翻訳ですが、納期が短くなっている一方で、人が減らされているから、以前は2、3人でやっていた仕事を一人でやらなくてはいけない。うちの会社は下請けですから、客から言われたとおりに納期内に仕上げないと次から仕事が来なくなるので、どんなに無理してもやらざるをえない。それに、例えば中国では私たちの10分の1の賃金で同じ仕事をやっているわけですが、そういうところと競争を強いられ、料金がどんどん安くなっても仕事が無くなったら困るから受けざるをえない。ほとんど毎日が自転車操業。
社員も営業と社長以外はみんな女性で、全部で15人。そのうち子どもがいるのが私を含めて3人で、若い人は結婚はしているけど子どもはいないとか、独身の人とか。そういう人たちが皆、夜中まで仕事をしている。
●大野 昨日、ソフトのエンジニアの営業の人と話をしたんで、ちょっと。彼が言っていたのは、コンピュータ業界では、営業が仕事を取ってくるけど、それを下請けの会社にどんな条件でどういう契約でやるのか、労働者も派遣で雇うのか請負か、時間外賃金はどうするのかという中で、彼は取ってきた仕事を、自分の会社の中だけでは回せない分については他の会社から人を派遣してもらう。あるいは他の会社に仕事を請け負わせて、そこでやる。そうすると労働者の権利なんて何もなくなっちゃう。そういう状況で働いてるんだという話をしていた。だからもう、仕事の内容とか雇用形態とかは、私たちがイメージしているのとはぜんぜん違うんです。
私も今は公務職場にいますが、民間の会社で働いたことが10年あって、8時から5時の8時間労働でした。でも今は、会社に行って仕事をして、8時間労働で賃金はこうであるというような、そういう感覚じゃないんです。たとえば、私がAという会社で仕事をしていても、そのAにBという会社からこういう仕事があるからこれぐらいの金で請け負わないかという話をもってくると、私はそのB会社の仕事をやるわけです。ある部署を丸ごと他の会社に委託するようなこともどんどんやる。ほんとに「雇用の流動化」というのはこうやって進むのかなと。
●寺田 白坂さんのところはまだ、中小零細的なところで、請け負った仕事も社員に全部見えているじゃないですか。だけど、大きい会社であればあるほどいろんなところの派遣社員で構成されているから、その労働者一人ひとりは直接の雇用関係がなくて働いている。私の知り合いの働いているところは派遣会社の下請けのそのまた下請けの孫派遣会社で、給料はその孫派遣会社から出ている。でもその孫派遣会社には最初に採用されただけで、出社もしないし、ほとんど会わない。月1回の手紙であなたの給料はこうです、というのが来るだけなんです。
帰宅は午前4時、親子の会話も朝だけ
■長谷川 白坂さんのところ、子どもはどうしているの。一日どういう生活なんですか。
●白坂 現状からいうと、いつもは午前10時に出勤して、帰宅するのは今週は月火水はなんとか午前1時台に帰れたんですが、木金は仕事が追いつかなくって午前4時。昨日も午前5時くらいです。先週まではそれが普通でした。私の場合、下の子は小学校で、学童保育に行ってるんですけれど。このかん帰るのが平均して午前4時ぐらいで、午前4時に帰るとすぐには寝られないんですよ。横にはなっているんだけれど、うとうととしていて。子どもたちは朝6時に起きてくるので、6時から7時半ぐらいまでの1時間半が親子の会話タイム。で、「行ってらっしゃい」と子どもを送り出した後、フッと寝る。会社の始業が午前10時からで、自分でもすごいと思うんだけど、体内時計がもう7時半から10時ってぴっちり眠る時間になっちゃってて。会社までは近いので10時ぐらいにババッて駆けこんで。で、もうそれから、帰るのが次の日の朝なので、朝の6時〜7時半が子どもと顔を合わせる唯一の時間。
■長谷川 平均睡眠時間は3時間ぐらいですか、ひどいですね。
●白坂 子どもたちも、話したいことはそのときにしゃべっておかないとしゃべれないというのがわかっているから、私が朦(もうろう)朧としているのにいろいろ言う。平日の夜に子どもと会えるのはたぶんもう半年以上もない。こんなんでいいのかといつも思いますよ。なんとかできないのかと。
●大野 昨年、美術大学を卒業して広告会社の下請けに入った女性の話を聞いたんですけど、朝出勤して、帰宅は夜中の1時から2時。締め切りに間に合わないときは3日間家に帰らない。会社内で仮眠を取っている。そうなってくると、母性保護なんて根本からないに等しい。その上深夜労働が解禁されているから、女性労働者の体はボロボロです。
■長谷川 給与体系は年俸制が多いと聞いていますが、どう思いますか。
●白坂 年俸制の人と月給制の人と2種類で、私は年俸。年俸といってもかなり低くて、私は以前の職場と比べると100万円下がりました。前からいる人は月給制で残業代もちゃんと出る。最近入ってきた人はもう、年俸制で1年間これだけ支払われると決まってて、自分からそれを希望する人もいます。年俸制だと、たとえば休暇をとりたければ1週間まとめて休んでいいよ、その代わり働くときは猛烈に働いて、という話ですから。
■長谷川 若い人には「仕事があるだけでいいじゃないか」という感じで、残業代も支払わなくなっているわけですよね。
●白坂 年俸はそうですね。
■長谷川 若い人なんかはどういう感じですか。
●白坂 いま私はひとつの部署をまとめている立場なので新規採用者の面接もやるんですが、すごく不思議に思うのは、今の20代半ばから30代前半の人たちって、私が考える給与の価値観とぜんぜん違っているんですよ。昔は勤続何年とかいって、それなりの給与水準が一定あったじゃないですか。今の若い人の考える基準はその半分くらいなんです。「それでいい」って言う。27歳の人がたった300万円の年俸で、「えっ、そんなにもらえるんですか」なんて言う。それまでフリーターをしてきた人とか、大手の銀行やメーカーに入ってそこで首切られて、民間とかフリーターとかを行き来してきた人。それが、今までと比べたら「そんなにもらえるの」と。
●西村 生活給という考え方がなくなっている。やめたというか、奪われちゃったというか。知り合いがこないだ夜中に泣いて電話かけてきて駆けつけたんですよ。まったくのパートで、時給で、しかも派遣だから仕事は職場の言いなり。この週は何曜日の何時から何時までと。夜中になることもあれば、昼間もある。だから収入が月5万になることもあれば、月15万のこともある。結婚もしていない若い人だから利用しやすいんですよね。今「少子化」だとか言っているけど、こんな状態では結婚したり、子どもを産むこともできないんじゃないでしょうか。
●寺田 私の学校のクラスのお母さんたちの中では、介護保険の開始以来、ヘルパーに幻想を持ってヘルパーになった人が多い。それこそ区内を自転車で、あっちのヘルパー、こっちのヘルパーと東奔西走。道で会っても立ち話できる余裕もない。子どもが小学校3〜4年になると仕事を始めたいという30代から40代初めの女性が多くて、クラスの中で多いのはヤクルトおばさんとヘルパーさん。でも時間に余裕がなくて、結局続かなくてやめていく人も多いようです。
●西村 リストラで正社員が減らされて、再就職すれば有期雇用で、賃金も大幅に減る。日経連が95年に、終身雇用を解体して全労働者の9割を非正規雇用・不安定雇用にしていくという方針を出したけど、世の中いまどんどんそうなっていますね。フリーターがはやりだしたのはバブルの時代で、そのころはバブルで時給もそこそこ良かったから「会社に縛られない自由な働き方」なんてもてはやされたけど、結局それが今の低賃金を準備したわけでしょ。あれが逆転して、全職場の低賃金が始まった。その一番先頭のところに女性労働者が立たされていたんじゃないですかね。
それと、労働基準法が改悪につぐ改悪をされて、長時間労働が当たり前になり、女性の深夜労働まで解禁されてしまったことが非常に大きい。これが、白坂さんの職場のような現実をつくりだしている元凶ですよ。男女雇用機会均等法以降、労基法の女性保護規定を撤廃しさえすれば賃金も職場での処遇も男性と同じになるかのような大宣伝がされて。私たちは絶対反対したんですが、既成の野党も労働団体や女性団体もみなその宣伝にのせられてしまって、「女性の権利の拡大」になるならと長時間労働・深夜労働の解禁を容認していった。その結果、女性差別はなくなるどころか男女の賃金格差はますます拡大しているし、女性の労働条件はとんでもなく悲惨なところに行きついている。この現状を根本からひっくり返すたたかいを起こさないと、もうほんとに生きていけなくなると思いますよ。
職場や地域でどう団結を回復するのか
■長谷川 この間の女性の深夜労働、女性の労働法制の改悪について、そういう流れをほとんどの政党が促進してきた。その結果がいま話されたような労働現場の劣悪な状況だと思います。このままでは労働者の健康も、家族や子どもとの関係も本当に破壊されてしまう。そういう現状をどうやって打ち破るか。労働者の団結が今こそ求められていると思いますが。
●大野 自治体で働いている労働者として考えると、戦争と民営化攻撃との対決がこれから、地方自治体のあらゆる業務において問題になる。今までは現業労働者を中心に人員を切ってきたが、2005年はすべてに本格的に襲いかかってくる。自治体の仕事自体もすべて変わってくると言って過言でない状況です。
私の職場ではすでに、非常勤で300人の首を切った。全国的にも特殊です。そのほとんどが10年、20年以上働いて来た人。それまでは60歳までずうっと更新されていた。自治体の窓口や住民福祉関係など、自治体を支える一番の現場で働いてきた女性労働者が、組合が守りきれない中で大量に首切られてしまいました。切った仕事はどうなったかというと、民間委託されたり、NPO法人を使ったり。本来は自治体が最も力を入れなければならない住民生活と直結する部分、一番苦しんでいる住民を助けるべき部分をどんどん切っちゃう。
■長谷川 住民に一番近いところが民間に委託されて、そこに働いていたパートの非正規雇用の人が切られるという構造ですね。
●大野 他方では民間企業の考え方を持ちこむといって、仕事の中に利益優先の考え方がどんどん持ちこまれてくる。ところがそれをやっちゃうとほとんど、行政としては実は成り立たない。必ず格差が出てくるし、しかもどんどん拡大する。
●寺田 教育もそう、一部富裕層とそうでないところと。
●大野 労働組合の女性部の集まりは、一種独特の雰囲気があるんですよね。家族の問題とか子育ての問題とかも含めて、発散する。その中で、保育や教育の問題というのはみんなで取り組もうよ、ということも多かったと思う。子どもを戦場に送らない、そういう動きには反対していくというような。だけど、そもそも今の労働運動が、労働者の団結を強化するような労働運動になっていないという中で、女性部の運動もそのままでは停滞というか、出口が見えない。やはり労働運動全体を変えなければ。
■長谷川 地域での女性労働者の団結という点では、どうなんでしょうか。
●白坂 数年前、学童保育や給食の民営化が起こったときはまだ、学習会を組織したり、地域でいろんな運動ができた。でも今は学童でもPTAでも、集まりをやっても人が来ないと会長さんが嘆いている。現実に、出てきて下さいと言っても出てこれないんです。私もその一員なんですけれど、職場との往復で精一杯でぼろぼろにされていて、地域にも、子どものことにもかかわれない。けっして意識がないから集まらないというわけじゃなくて、どうにも余裕がなくなってきている。労働時間もバラバラで、労働者として団結できる条件そのものが奪われてしまっている。自己弁護しちゃいけないんだけど。
●鷹林 うちの保育園は8年ぐらい前に父母会がつぶれた。その後、民営化が発端になって父母会を作りたいという人がいて、もう一度父母会ができてきた。民営化に反対するんだったら私も一緒にやろうと思ってかかわったんですけども、論議していく中で結局、民営化反対というふうにやるのはダメだとなってしまった。「中身としては民営化に反対したいんだけど、そう言ってしまうと、いろんな人が父母会に集まらない」と。
●寺田 私なんかは15〜16年前の経験だけど、夜に保育園の父母会の集まりがあって、イベントというと必ず父母会が保育園と一緒にやっていましたね。当時は働いている親の保育園へのかかわり方として、夜や土日にそうした集まりを持っていました。それが崩れ始めたのが、保育士の週5日制による土曜日の保育時間の打ち切りとパートの増大です。親の方も、5日の人と6日の人、また1日の労働時間が長くなったりして、いろいろな問題が出てきました。それでも工夫してやってたんです。今はないんですか。
●西村 相模原の保育園では、5〜6年前からだと思うんですが、そもそも父母会を作らせないし、名簿も作らせない。
●白坂 女性労働者の連帯感っていうのは心情的にありますよね。保育園の送り迎えしていると、保育士さんも、お母さんたちもみんな女性労働者だし、そこでのちょっとした世間話とかというのは別に分断されてないし、公務員と民間との違いが問題になるようなこともない。みんな同じ労働者として、家庭の問題とか夫の問題とかいろいろ抱えながら頑張っているんだみたいなところは、別に崩れてはいない。ただ実際の雇用形態が激変しているなかで、団結しにくくなっているのをどうやって乗りこえるかが問題です。
●鷹林 私は自分が「障害者」であるなかで、女性だったら同じような悩みを抱えてつながりを持てるとはいまいち思えないで来たんですけど。職場には組合もなければ生活給なんていう感覚もまったくないし、初任給も9万円ちょっとで、アップ率だけは公務員並みなんだということが強調される。しかも去年昇給がストップしていて。本来ならみんな怒っていいはずなんですけど、実際に立ち上がる人はなかなかいない。そういうなかで私自身苦闘しているところなんです。
でも、きょうの話を聞いて、白坂さんなんかも大変な労働条件のなかでやっている。知らないことがたくさんある。それをもっと自分のなかで蓄積していって、多くの人に訴えかけていける言葉をつかんでいく必要があるなと改めて思います。
●西村 具体的な実感として、どういう立場の女性であっても共通に話せることがあるというのはすごく重要。女性は保育の問題、福祉の問題、労働条件の問題など様々な課題を良くも悪くも全部トータルに背負っている存在なんです。それを全労働者のたたかいに変えて、いま出てきている攻撃と立ち向かうことができれば、世の中変わっちゃうというくらいの力を女性は持っている。女性労働者が労働運動の中心にすわる、青年労働者と一緒になって労働組合を下から作り変えていくような、そういうたたかいが今こそ求められていると思うんです。
私は住民運動や市民運動に長いことかかわってきましたが、労働運動が停滞していたからそこに逆に活路を見いだしてきたという面があった。だけどそれではダメで、すべての問題をもう一回労働現場に押し返していくみたいな、そういう関係がないと本当の意味で勝てないと思ってきたんです。市民運動は市民運動で大事だけれど、やっぱり市民運動だけでは攻撃は押し返せないの。たとえば「日の丸・君が代」の強制問題でも、肝心の教育労働者が、今回の東京都のように学校現場で立ち上がるということがなければ、そういうたたかいとタイアップしないかぎりは本当には発展しないんですよ。そこがこれからの課題です。
公的保育の解体と深夜労働の行きつく先は
■長谷川 石原都知事が就任して福祉領域でまず手がけたのは、保育なんですよ。石原知事は「東京から国を変える」と言い、民営化によって国の保育制度を変える攻撃に手をつけた。認証保育所制度というものを導入して、保育を親の「ニーズの多様化」に適応させると。その中身は駅前保育や24時間保育。女性労働者が深夜でも、どんなに劣悪な労働条件でも働かざるをえない現実を逆手にとって、あたかも女性の要望を満たすかのような宣伝をしてやっている。「すべての児童に保障される保育」という児童の権利を無視して。しかも、駅前保育は高いから、月5〜6万円もするような高い保育料は普通の女性労働者には払えない。だから作った保育所も結局つぶれているんです。この認証保育所制度には、ほとんどの政党が実は賛成です。生活者ネットも賛否の態度をはっきりさせない。事実上の容認。この石原知事のやり方は女性労働者にとってみたら本当に毒の入った饅頭(まんじゅう)です。
●西村 石原都政が出したこの認証保育所制度はいま全国に波及している。そもそも90年代に入って、措置制度から契約へという流れの中で、自分の入りたい保育園を選べるというのと引き換えに保育にたいする国や自治体の公的責任を撤廃しようとする動きが強まっていたけど、石原知事はそれを一気に推進した。東京都の場合、美濃部都政の時代にかなり手厚い福祉行政を作り上げていたということがあって、保育所は100パーセント公立だったんですよ。それを規制緩和で解体して民間委託する。これは大変な攻撃だと思うのね。民間委託というのは、実際には営利業者への丸投げなんですよ。「職員の雇用も従来どおり、保育の内容も変えない、かえって良くします」と言うんだけど、それはまったく保証されない。お金を出せばいい保育をしますと言うけど、お金がなければできないというわけでしょ。
相模原の場合は典型的な事例があってね。国立病院が独立行政法人化したときのこと。看護師さんたちのたたかいの結果として病院内に保育所が作られていたのが、独立行政法人になった時点でポーンと丸ごと民間業者に売り払われた。そしたら労働者はいきなり全員解雇・再雇用。賃金も20年働いていた人が月給20万円で、それを基準に大幅に引き下げられた。非常勤・パートの人はまるまるクビ。他方では業者の金もうけ主義が優先するなかで、「良い保育園」をアピールするため必要でもないことをやるようになる。「洋食の食べ方教えます」とかね。そして経営がうまくいかなくなると他の業者にまた投げ売りする。そのなかで子どもたちが翻弄されていくということも実際起きているんです。
●大野 長時間保育の問題ですけど、女性労働者にとって、働きたいっていう意欲と働かざるをえないという家庭の状況がある。しかし現在は雇用形態があまりにも流動化していて、本当はそういう生活はいやなんだけど、働くためには夜でも預かってくれるところを必死に探すということになる。まだ、鷹林さんところも白坂さんところも夫の協力でなんとかなっているけど、夫婦がともに深夜まで働いていれば、駅前でも預けざるをえない。現実問題としてそういう人たちにどう訴えていくのか。そこを考えたいんですが。
●寺田 「駅前」や「24時間保育」の問題から発生しているけれど、保育の考え方を変えようとしているのが問題。何よりも設置基準を変えたのがひどい。1〜2年は、それでやっていけるかもしれない。だけど子どもが少し大きくなったら、親は駅前から出勤できるけど、子どもにとって、子ども同士の交流がないなんて、異常です。そのうえ生活圏と切り離された小学校入学なんか考えられないです。まずは保育園問題が子どもにとって、そもそも何なのかというところをはっきりさせないと。
●白坂 現に親がそういう事情にあると、せっぱ詰まった状況で生活のために仕方がないという面があるわけですよね。だけど、子どもを中心に考えた場合にどうなのか。家庭的なところを離れて十数時間も子どもが集団生活する。しかも今の保育所は規制が取り払われて、狭い空間にスシ詰めのところもあるわけでしょ。それは子どもにとっても限界のあることじゃないのか。単に国や都の攻撃がどうこうというだけじゃなくて、そこらへん子どもの視点も入れて考えていかないと。
●鷹林 私のところは区立の保育園ですが、07年の民営化が決定されて説明会が始まった。「民間だっていい保育園いっぱいあるんだ」と言ってきている。たとえば「子どもに和食の料理を食べさせるには手間がかかるんだけど、全部和食でやってくれる保育園があるんだ」とかね。そういう論理を打ち破っていくのはけっこう大変。
●西村 女性労働者にとっては、長時間保育の問題は古くて新しい問題で、それこそ70年代から議論があったんですよ。公立保育園での保育時間の延長をめぐって、子どもを預ける側と預かる保育労働者の側の利害が対立しているように描き出されるんだけど、実は資本家とその政府という共通の敵がいるんであって、共通のたたかいにすべきなんだと。長時間保育の必要性から出発するんじゃなくて、むしろ女性の長時間労働をこそなくしていかなくちゃいけないんだ、そのために一緒になってたたかうんだと。もしどうしても延長が必要だというのなら、職員の数を増やせと。それもパートなんかじゃなくて正規職員をと。それが戦後労働運動のなかでの基本的な考え方、たたかい方だったと思うんですね。
今は、深夜労働まで女性に解禁してしまって、夜12時を過ぎても職場で残業させられている女性とか、パートをいくつも掛け持ちしなきゃならない女性がどんどん生まれている。そして保育は金で解決しましょうと。保育料を応分に負担すれば、夜中でも対応する保育園にしますと。だけどこの問題は、女性だけじゃなく男性も含めて、労働者とその家族が人間として生きていくための最低限の権利にかかわること。また子育てというのは本来、社会の責任、国や自治体の公的責任としてあるんだと。そういう原則的な考え方を貫くなら、女性労働者の劣悪な労働条件にたいして、単にそれに見合った保育園を作ればいいのか、ということでしょ。それでは保育園は、女性の労働条件の悪化を裏から支える補完物という役割しか果たさない。
とにかくニーズに合わせてとか、時代が変わったとか、それがキーワードになってるんだけど、それは違う、と言い切らないとダメなんですよ。日本共産党はそこが言えない。ニーズ論に屈服している。だから民営化にたいしてもたたかえないんです。
■長谷川 いま言われたことは重要だと思う。公的保育や福祉は、戦後の労働運動が実力でたたかいとってきたものです。そこでの原則的な考え方、たたかい方をもう一度復権させるということはすごく大事だと思いますね。
石原「教育改革」で学校現場は今?
■長谷川 福祉の解体と並んで、石原都政の最大の反動的政策が教育にたいする攻撃だと思います。学校教育の現場ではどういう問題が起きていますか。
●寺田 学校では予算の考え方が変わったんです。「教育改革」「特色ある教育」という名で、一部の学校にはプラスアルファの金を上乗せして、公教育の平等・均等性をこわしている。たとえば杉並で校庭芝生に1校4000万円。教育内容を民間にというのは教育基本法違反で論外ですが、来年度から始まる小中一貫校の総合科1教科を三菱総研に1200万円で委託する。今までは“学級数・児童数あたりいくら”の予算が標準配当されていました。当たり前なんだけど、平等に配当されていたわけです。それがまず、財政難という攻撃の中で予算を一律10%削減することから始まったんです。その上で、平均的12学級規模学校での年間予算は合わせて今1000万円くらいですから、先ほどの金額は4つの学校分の予算に当たります。公教育の平等の破壊はすごいものです。
同時に民営化という人減らしです。教育と切り離された。まずは警備の機械化という形での民営化。次に給食の民営化です。学校には、他にもいろいろな人が働いている。たとえば給食は、作る人がいて食べる人がいて、同じ学校の職員。ところが、民営化でパート労働の引きつぎでやりくりしていて、学校という組織とは切断された形になった。もともとは、職員だったら、子どもを軸にお互いが見える関係を作ってきたんです。
その次が人事考課、学校評価の導入です。一番ひどくなったのは、校長の権限強化。校長の権限強化は都・区教委の権限強化なんですよ。条例が変わって校長にたいする締め付けも強化されて、教育行政の機構が大きく変わった。教育委員会のもとで、いわゆる昔の庶務課が教育行政のトップになる。今までは庶務課は金の出し入れとこまごました条件整備のための部門だったのが、その庶務課長が企画のトップになる。それが杉並でいえば直接に山田区長と結びついて、教育アクション計画を打ち出すんです。これにたいして組合や教職員が口を出すのは当然。現場の教師が教育の中身について何の発言権もなかったら、およそ教育とは言えないですよ。
とくに卒業式・入学式のような儀式的行事と道徳教育、これについては絶対に譲らない。石原知事は、1999年から始めて全都に道徳教育の公開講座を強制してきました。03年10・23通達に見られる「日の丸・君が代」の強制、いま始まっている少人数教育や週案の提出強制、そしてそれのチェック。少人数というのは、習熟度別教育ということです。「習熟度別方式にすると、その結果、中学校ではほとんど学級崩壊になる」という中学の先生もいるくらい。そりゃ、子どもというのは一律にはなかなか習得しないところがあるわけですよ。でもね、これだけいろんなことを一緒にやっている授業が、算数だけ「できる、できない」と分けられて、それで子どもたちも、自分はこのぐらいだという序列を植えこまれてしまうと、学ぶ意欲を失っていっちゃいます。「学力低下」をあおり、一部、優秀な子を育てたいのが狙いです。もちろん、私たち教師は抵抗してますが。
●鷹林 これまでだったら「障害児」とは言われなかった子どもたちも、「障害児」とレッテル貼りして養護学校などに移されたりしている。その結果、養護学校は生徒数がものすごく増えてしまっているらしいんです。
●寺田 少人数指導が教師には「指導力不足」、子どもたちには「落ちこぼれ」をどんどん作りだそうとしているんです。そして「知的障害児」を対象にしたところに移していくわけでしょう。実際には普通学級から遅れた子を生みだして、排除していく。養護学校に送りこまれてくる子どもが増えているのはたしかです。差別・選別そのもので、「障害児」への差別もますます拡大します。
この習熟度別方式はいま一斉に始まってて、教育委員会がチェックしに来て、不備があった場合には、子どもたちが書いている学級日誌の提出までさせる。私はこれは完全に教育基本法違反だし、憲法違反だと思っています。子どもたちは学級日誌を自分たちなりに好きに書いていて、先生たちも「まあこんなこと書いて」と思うようなこともあるけど、そもそも他に公開するようなものではない。それを教育行政の側が、少人数教育をちゃんとやっているかを見るために証拠物として出させる。子どもの書いたものがこんなふうに扱われること自体、教師と子どもの関係をこわしていくことになりますよ。
そういうことを私たちはほんとは拒否しなければいけないんだけれど、そうしなかったら私たちも生き残れないみたいな、そういうぎりぎりの状況に学校現場は来ているんです。
■長谷川 小泉政権はいま、自衛隊のイラク派兵を突破口に、憲法9条を廃止して再び60年前のような侵略戦争、世界戦争をやれる国へと突き進んでいます。そのためには教育を根本から変えて、再び「お国のため、天皇のために死ぬ」ことを無上の喜びとする価値観を子どもたちにたたきこまなければならない。それが教育基本法の改悪、「日の丸・君が代」の強制です。その最先頭に石原知事が立っている。これにたいして昨年、都の教育労働者が大反乱に立ち上がった。ぎりぎりの土壇場に直面して、組合の方針もない中で、一人ひとりの良心をかけた決起が起こり、それが逆に石原知事や小泉政権に大打撃を与えている。このたたかいをひきついで、さらに発展させていくことが大きな意味を持ってくると思いますが。
●寺田 「日の丸・君が代」を強制する10・23通達は、「こういう向きで立って歌え」とまで言っている。そこまでの踏みこみをいったん許してしまうと、様々なことにも次々踏みこんでくるんです。だから、あれは絶対に許せなかった。そもそも「日の丸・君が代」について「なぜ」と聞いても、当局は答えられないんですよ。そういうのを押しつけるなんて、本当に許されない。
「日の丸・君が代」強制もそうですが、労働者が人として認められていない。人として生きるためにたたかおう、ということです。最近、職場の知り合いでがんになった人がいて、その人に聞いた話ですが、民間労働者で抗がん剤を打つのに、それこそ職場に病名を隠して、土日に点滴を受けて治療している人がいるんだと。公務員の場合は手術から抗がん剤治療まで休職できます。だから、あたりまえの話だけど、労働者が戦後に勝ちとった権利がものすごく大事でね。その権利を民間とは違ってまだぎりぎりのところで保持している公務員労働者が、自分の権利を行使していくことが大事だなと最近すごく痛烈に思ったんですね。殺される前にたたかわなきゃダメだなと。
石原知事は戦争に突進している
■長谷川 「日の丸・君が代」の問題で、石原都知事の思想というか、人間観がほんとに軍国主義的で差別的なものだと改めて思いました。北朝鮮や中国にたいしても、彼は最初から本気で戦争をやりたがっている。だから朝鮮人・中国人、外国人労働者への排外主義に満ちた極悪の暴言を平気で吐く。ほとんどテロルをあおっているのと同じです。女性や「障害者」にたいしても、差別意識がすさまじい。子どもを生まなくなった女性が長生きしているのは「悪しき弊害」で、「文明の破壊」だなどと平然と言う。自分の母親をも冒涜(ぼうとく)する発言ですよ。ほんとうにファシストそのもの。2期目の石原知事は、1期目以上にそれがむきだしになっている。
●西村 石原知事はほんとうに女性の敵。優生思想と男尊女卑のかたまり。「ヒトラーと呼ぶならそう呼ばれてもいい」と石原知事は言うけど、ヒトラーが何をやったのか。人類を勝手に優秀な種族と劣った種族に分類して、劣った方は絶滅すべきだと言って、ガス室でユダヤ人を大量虐殺したわけでしょ。石原知事だって同じことをやりかねない。事実、このままいったら彼は必ずそういうところに行きつきますよ。だのにどうして石原都知事に反対する声が都議会の中で起きないのか。公明党や民主党はもちろん、共産党まで石原知事にすり寄っているじゃありませんか。この現状は、絶対に打ち破らなくてはダメだと私は思います。
もうひとつ、石原知事の問題で重要だと私が思うのは、東京都のやることは全国に波及するんです。いま地方自治体を再編して道州制にということが言われて、私のいる相模原市も市町村合併推進でいま大もめなんですけど。もう地方自治そのものがあらゆる面で崩壊していく。財政見てもそう、公務員改革もそう、郵政民営化もそう、福祉もそう。全部、国がコストダウンのために、最後は戦争に一切を集中するために切ってくる。それじゃもう、労働者も地域住民も生きられないことははっきりしてて。
こういう小泉や石原知事のやり方とたたかうためには対決軸をはっきりさせなくちゃいけない。石原都政がその最大焦点。長谷川さんが「石原知事に挑戦状」をたたきつけると言っていますが、本当に石原VS長谷川で、はっきりした対決軸でのたたかいをぜひやっていただきたいと思う。石原知事は本当に、倒さなきゃダメ。
■長谷川 みなさんの職場の現実や様々な思いをうかがいながら考えてきたんですが。膨大な女性労働者が劣悪な労働条件のもとで呻吟(しんぎん)しつつ、団結することも困難な状況に置かれている。なかなかすぐには活路が見えてこないような厳しさが現にあるわけですけど、やはりその突破口は、職場の団結、地域の団結を取り戻していくことにあると思う。現場の労働者が団結して、たたかわなくなっている労働組合を下から、たたかう組合に変えていく。この労働運動の再生に向けたたたかいと、地域でのたたかいがしっかり結合する。
それで、小泉政権と奥田(日本経団連会長)による戦争と生活破壊の攻撃を正面から打ち破っていくことです。その勝負どころが、石原都政との対決です。小泉=奥田路線を、現実の攻撃として他の誰よりもストレートに貫こうとしているのが石原知事。ところがいまの都議会では、西村さんも言われたように石原知事にたいしてはみんなほとんど賛成。共産党も「反対」とは言わず、批判もしない。政策によっては賛成さえしている。実際には、女性差別や「障害者」差別に満ちた発言を石原がやって、非常に大きな怒りを巻き起こしてはいるんですよね。だけど既成政党のそうしたていたらくの中で、怒りが一つの力となって石原に立ち向かうとはなっていない。
ここを突破するには結局、昨年11・7集会に結集したような新しい力が既成政党に代わって登場し、石原に正面からぶつかっていくことだと思います。今度の都議選はその最大の勝負です。皆さんの提起とたたかいに学んで、ともにたたかっていきたいと思います。きょうはどうもありがとうございました。
|