
第2部 2-2 社会保障 福祉現場の労働者に聞く
福祉現場の労働者に聞く
●聞き手 長谷川ひでのり
|
福祉守るため行政との交渉を続けよう
ホームヘルパー・小出陽子
週2回、午前中2時間ずつ、家事援助をやっています。買い物と掃除で動きっぱなし、走りっぱなしの2時間です。利用者さんは80歳過ぎている。内臓疾患の大手術のあと2週間で退院されて、ご自分で食事を作っていらっしゃる。でも布団なんか干せない。自転車で40分かけていって、賃金は2時間3千円。交通費は出ない。もちろん有休もなし。雨の日は電車代がかかる。2時間働くとぐったりしてしまって、午後の仕事ができない。利用者さんの気分に左右され、直行直帰だから、つらいことを言う相手がいない。身体介護なんて体力的にとてもやれません。
そんな中で、05年の介護保険制度の見直しで、厚生労働省が家事援助をなくすという方向を出しています。
9月17日に事業者の連絡会主催で、第6回杉並介護協議会研修委員会ヘルパー研修会というのがあったんです。各事業所からヘルパー100人ぐらい集まったんですよ。杉並区から高齢者福祉担当の女性が来てあいさつして、100人が10人ぐらいのグループに分かれて約1時間、現場の悩みを相談しなさいということで討論した。メインは1時間の講演。「お年寄りの立場にたって、ヘルパーは頑張って下さい」という話なんだけど、最後に何言ったかというと「厚生労働省はホームヘルパーの廃止を考えている。今後は介護福祉士に移行する。また、要支援と要介護1の家事援助廃止で、筋肉トレーニングをやる」と。
参加者は凍りつきました。ヘルパーを廃止するのなら、話し合うこともなかったのに。すごく疲れた。その上「厚生労働省はフィリピン・アジアからヘルパーを導入して、その人たちに安くやらせようとしているんです」という言葉で話を締めたわけです。すると一人のヘルパーが抗議の声をあげました。こんなことを言うために100人も集めたのか、負けてたまるか、という感じでした。去年の2月に10万円も学費を出してヘルパーの資格を取って、「10年働けますよ」と激励されて、やっと始めてまだ1年もたたないのに、ヘルパーを廃止する方針が出たわけでしょ。
ヘルパー廃止すると100万人のお年寄りに影響があるんです。ヘルパー自身についても雇用問題が生じるというのは、はっきりしている。向こうが言っている理由が、「ホームヘルパーが行って介助しているから、介護度が進んだ」とか。それはないでしょう。許せないですよ。今、20万人ヘルパーがいて、お年寄りが人の手を借りて自分の生活を快適にしているわけでしょ。お年寄りがどうしても必要なことをヘルパーにやってもらう、それがいけないことなのか。それをやめるなんてのは、非人間的ですよ。
10月14日に厚生労働省に、10月29日は杉並区に、「介護と福祉を要求する杉並住民の会」のみなさんと行って交渉をやりました。あるヘルパーさんが「私たちがやっていることは悪いことなんですか」と迫ってました。厚生労働省は「必要な生活援助については今後とも保障していくことを、現場の声も踏まえ検討する」と答えざるをえませんでした。やはり力関係ですね。
長谷川さん、4年間、粘り強く敵の攻撃にもめげず厚労省交渉をやってきたでしょう。あれが効くんです。あれでやっぱり違うの。そんな運動があって、地域の団結やたたかう労働者の団結があれば、そう簡単に負けないと思うんですよ。◆
地域に根をはる労働組合・議員とともに
ケアマネージャ・岡田とも子
私は杉並の事業所で04年からケアマネージャをやっています。前事業所ではフルタイム非常勤でした。02年ごろは兼任業務で支援センターの仕事もしていました。フルタイム非常勤なので残業はさせないという方針なんですけれど、実際には残業しないとできない。この間は新人の男性が異動になり、2人体制で1・5人分の仕事です。そんな中で「3年4カ月で雇い止めです」と言われた。「フルタイム非常勤はもう雇わない」という経営側の方針があったわけです。その時点で賃金も能力給に移行して、ヘルパーさんたちも時給1200円から1000円に切り下がって、たくさんのヘルパーさんがやめていきました。
だけど、私は納得いかないですよ。労働組合に訴え、団体交渉を申し入れました。上部団体の自治労にも行って、新宿労政にも聞きに行きました。特に問題なのは自治労の幹部ですね、「あんたね。職場で嫌われているんだから、もう闘争やめたほうがいいよ」と言うんですよ。相談に行っているのに、私のくやしさを共有する気なんてまったくない。結局、金銭解決案も出たけれど、「飲めません」と最後ぎりぎりのところで、ハンコつかなかった。
労働相談で東京西部ユニオンに出会ったんです。東京西部ユニオンは私の「納得できない」という怒りをダイレクトに受け容れてくれた。「これはおかしい」「勝てる」と言ってもらえた。どこに問題があるのか、一緒に団体交渉してわかろうとしてくれる。そういうところがすばらしい。そんな労働組合が少ないと言ってもいい現状でしょ。労働者が自殺に追いこまれたり、泣き寝入りをさせられたり、「精神障害」になったり。もう追いつめられている。そういう現実の中で、「地域にこういう労働組合があるぞ」っていうのはもっともっと、声を大にして言っていかなきゃいけないと思います。
現在、解雇撤回闘争は団体交渉が4回目で突然打ち切り。法人に全然誠意がない。で、地労委に提訴して徹底的に争っています。地域でのビラまきなどもやって、そのなかで東宝の争議を担った高齢の利用者が応援してくれたり、職場の仲間から励まされたり、自分の背中を押されたって感じです。
そして、やはりそれを支持してくださる政党、議会で主張してくれる議員、労働者の立場で言ってくれる議員が必要です。利用者にとっても家族にとっても必要です。それが結局は福祉を守るということになると思うんです。行政は「介護保険で利用者の日常生活だけをお世話すればいいんだ」と言うけれど。たとえば、一番困難な一人ぐらしのAさん。目が見えなくて、食べこぼしにゴキブリがいても退治することもできない。視覚障害者手帳をもらおうかとか、成年後見制度に相談しようかとか、そういうことも本人の側からはもう言えなくなってきている。長谷川さんからの提起もあって、信頼できる医者にも介護保険の主治医になっていただいた。
そういう意味では地域の団結が大事。医療面でも、地域の議員さんとかケアマネージャ、事業所とかが一体となって行政を動かし、そのお年寄りに対処していく。それで初めてその人の人生に全面的にかかわることができる。ケアマネージャひとりで絶対そんなことはできないですよ。そういう議員をいっぱい作りたい。◆ |